beerhole’s blog

ウェブデザインを中心とした雑記。自分用のメモ。音楽と美味しいもの、ライフスタイルについても少々。

取り寄せたもの感動したもの、美味しかったもの、2016年。

2016年に取り寄せたり買ったりしたもので、感動したもの・美味しかったものをまとめてみる。どれも自信を持ってオススメできる。

マルイチベーグル / 岩塩

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ベーグルは10代のときにシアトルで初めて食べた。というのは嘘で高校生の時にドトールのスモークサーモンとクリームチーズのベーグルサンドで覚えた。とりわけベーグルを好きなわけではないが、こちらの岩塩ベーグルは絶品だ。


サンクゼール / タルタルソース

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僕はタルタルソースが大好きだ。揚げ物は何にでもタルタルソースがいい。このソースでタマゴサラダを作ってサンドイッチにしたら、もうお店レベル。ところでのれん名のサンクゼール。代表が久世(クゼ)さんだからなんだよね。

一本堂 / たから

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しっとりもちもちの食パン。ごはん党だからそこまでパンにハマったことないのだが、これは沢山食べた。エシレのバター(ボルディエも可)をたっぷり塗って食べたら、それはもう至福の時間。とにかくもっちり。


パティスリー・パリ セヴェイユ / フォンダンショコラ

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スィーツ激戦区の自由が丘で1,2を争う人気店。正直自分にとっては凝りすぎているし甘いのであまり好きではないのだが、フォンダンショコラだけは絶品。たしか1日限定100個。電子レンジで軽く温めるとご覧の通り。コーヒーに最高に合う。


厚木ハム / ベーコン

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自由が丘のToday's Specialで購入。肉厚でとっても香り豊か。生涯食べたベーコンの中でかなり上位に食い込むクォリティ。アスパラベーコンをオーブントースターで作ったのだが、脂と煙がすご過ぎて火災報知器を作動させてしまうという失態を犯してしまった。でも、そんな事故を差し引いても最高だった。

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日和佐燻製工房 / ごまさばのスモーク

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青山ファーマーズマーケットで出店していて試食して絶品だったため購入。僕はシンプルにウイスキーのつまみにしたけど、サンドイッチやパスタの具に絶対合うに違いない。賞味期限はどのくらいだったっけ。


ツッカベッカライ カヤヌマ / テーベッカライ

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有名な貴族御用達クッキー。ノーブルな育ちのよい人かグルメな人はご存知な名品。恥ずかしながら初めて食べた。東京最強クッキーといって過言ではないと思う。シナモン。チョコ・バニラの3種類のフレーバー。シンプルだけど上品な絶品味。

 

育風堂 / はもんみなかみ スライス

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写真は生ハムだが、ベルカスラーとベルリーナバオフも絶品。軽井沢の腸詰屋、新潟佐渡のへんじんもっこ、唐津くん煙工房など諸々有名店のお取り寄せしているけど、ここはトップランク。現地のレストランもいつかトライしたい。

www.rakuten.co.jp

腸詰屋 本社(株式会社ぐんらく)

furusato-ippin.co.jp

インターネットとスケートボードとパンクロックとサンフランシスコ

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年始だし2017年も始まったので少しふんわりしたことを書く。

私は高校1年生のときからスケートボードをやっている。今はたまにミニランプを楽しむ程度だが、高校時代は勉強も部活もそっちのけで晴れた日は毎日滑った。1日何時間も練習をした。トリックが出来るまでひたすらやった。

始めたばかりの頃、スケーターの先輩からBlindのVideo DaysというSK8のビデオを借りた。たしか94年か95年。これは本当に擦り切れるほど観た。監督はSpike Jonze。彼のキャリアの最初の映像作品だ。まだ幼い頃のGuy MarianoがJackson5のI Want You BackのBGMでストリートを滑っていた。 Mark Gonzalesの滑りは自由でクリエイティブだったし、アディダスのスーパースターもカッコ良くて真似をした。トリックも音楽も世界観も最高だった。

スケートボードにおいて、トリックの難易度は重要ではない。どういうことかと言うと、スキルだけでは評価されないのだ。一番重要なのはスタイルだ。Tony Alvaは”Style is everything”と言った。 そして、スタイルを作るのは思想であり哲学だ。

ただ、高校生の私はスタイルがあったとはお世辞にも言えなかった。僕の中のスケートボードは西海岸でパンクロックとセットだったし、東海岸のスタイルもヒップホップもちょっと違った。とにかく大好きだった。でも思想を全く持っていなかった。

 

だから東京に出てきたときにスケートボードもパンクロックのルーツも、ひた隠しにしてクラブミュージックとファッションが大好きなシティーボーイを気取った。(その後、音楽とスケートボードがライフスタイルに溶けているかっこいい大人たちに出会い、アイデンティティを取り戻す)

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アイデンティティを取り戻した頃、住んでいたアメリカンハウス。21〜26歳くらい。

最近の自分ときたらどうだ。元々デザインをやっていたキャリアは特に話さず、Brooks Brothersを身にまとい東部エスタブリッシュメントのふりをして仕事に没頭している。頭がいいやつは沢山いる、育ちがいいやつも沢山いる。自分が求められているものはそこじゃないのにまた同じ過ちを犯している。仕事で出会うや人達は確かにすごい。出会ったことのないような人たちばかりだ。でも自分とは当然違う。スケーターにもライブハウスにももっともっとカッコいいやつらは沢山いる。

なぜ気づいたかというと、ビジネスの場面でも思想を持たないものはダメだ。なんて話ばかり耳にするようになったからだ。そういえばシリコンバレーもサンフランシスコだし、大好きなGreendayイーストベイ(バークレー)のギルマンストリートだし、スケートボードでも、チャイナバンクもサンフランシスコだ。そしてスティーブジョブズもサンフランシスコ生まれで、カウンターカルチャーの人間だ。そしてビジネスの世界でもそんな枠からはみ出したようなクリエイティブなエネルギーを必要としている。昨今のデザイン思考ブームも同様の流れだと思う。多様化した現代のビジネスにおいて、クラシックでスタンダードなフレームワークは通用しにくくなっている。それにユーザーは馬鹿じゃないからスタイルのない、仕掛けられたものはすぐ見抜いてしまう。だからビジネスでも思想が大切なのだ。

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アメリカンハウスの庭。スケートランプがあった。

そういうわけで2017年は改めて自分らしく振舞い、自分のやるべきことをやろうと思う。スタイルを持って仕事もして、スケートもして、音楽もやろうと思う。それが結果として周囲の人たちのためになればいいと思う。あと、一番気をつけるのはコミュニケーション。

30代後半に差し掛かった男性が2016年に買ってよかったもの

私も流れに乗って安いもの高いもの、購入によって生活に変化が起きたものと記憶に残っているものをまとめてみた。

三菱鉛筆 クルトガ ローレットモデル ガンメタリック(シャープペンシル

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メモでも何でもパソコン(タイピング)で済ませてきたけど、今年は字を書くことが多くなったので購入。筆記用具のイメージはロケット鉛筆で止まっていたのだが、技術革新は進歩していると痛感。適度な太さと握りやすさ。そしていつまでもシャープな書き心地。見た目のブラックも好きで、MONO消しゴムもブラックにした。

明治 ハイミルクチョコレートBOX 120g 26枚(チョコレート)

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頭を使うと甘いものが欲しくなる。今年はコーヒーとチョコレートを相棒に仕事をするスタイルが定着してしまった。手を汚さずに食べやすく、持ちのよさから個別包装のこの商品に行き着いた。競合であるロッテ ガーナエクセレントは134g 28枚入り、一方明治のハイミルクチョコレートBOXは120g 26枚入り。同じようなパッケージで同じような金額だが枚数は違う。でも二つを食べ比べると明らかに甘く滑らかな明治に軍配が上がるのであった。

Giovanni マグネティック・フォース・スタイリングワックス 57g(ヘアワックス)

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今までは資生堂UNOかマンダムGATSBY、ナカノを使っていたけれど頭皮が弱いのと将来の不安からオーガニックのスタイリング剤に変更。オーガニックだけど、セット力や仕上がりもこれまでで一番。グレートギャッツビーのレオナルド・ディカプリオのような髪型の私だが、夜まで崩れない。コスメキッチンで買えるが高いので、私は並行輸入でまとめ買いしている。

エビス プレミアムケア 7列レギュラー ふつう(歯ブラシ)

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歯ブラシなんてどれも大差ないと思いながら生きてきた30数年。でもこの歯ブラシに替えて感動した。毛は細くて、ヘッドは少しだけ横に大きめ(幅広)。"ふつう"でも柔らかく感じて、ちゃんと磨けるのか最初は慣れなかったけど、とにかく磨きやすい。私は7列レギュラーふつうだけど、とにかく色々試してみて欲しい。

Adidas Pure Boost 2.0(ランニングシューズ)

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以前より走っていたが3日に1回5km~7km、ルーティーンとして定着してきたので専用のシューズを検討。本当はUltraBoostが欲しかったが手に入らずにこちらで我慢。この製品は海外限定でデッドストックだが、PureBoostシリーズであれば同様の軽さ・クッション性と、走りやすさが手に入るはず。まっとうなランニングシューズを買ったのがはじめてということもあるかも知れないが初回走ったときは感動した。足がどんどん前に出る。

 

JBL CHARGE2+(Bluetoothスピーカー)

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リビングでもバスルームでも音楽が聴けるように購入。シティーボーイならポパイで紹介されてたようなビンテージのスピーカーよりBluetoothスピーカーでスマートにいきたいと思う。BOSE/Soundlink Mini IIとHarman Kardon/ESQUIREと迷ったけどコスパと音の好みでこちらに決定。中学生の頃のケンウッドやアイワのガンダムのようなミニコンポの時代から考えると涙が出るほど、コンパクトでスマートなわりに音が良い。

iRobot ルンバ880

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引っ越して部屋が広くなったので、以前より掃除が億劫になってしまった。でもルンバを導入してからは格段に掃除が楽に。これは本当に掃除のストレスから開放された。掃除機よりも強力に吸うと思う。国産メーカーとの検討やネガティブなレビューで迷ったが、こちらの最新でないものを安く購入。半年間、ルンバ+掃除機+クイックルワイパーの併用の掃除運用だが、今のところ大満足。

Herman Miller セイルチェア(ワークチェア)

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私は高校生のときに買った中古のジョージネルソンのラウンドテーブルを未だに使っている。一方で比較的安い家具は大抵引越しのタイミングで処分してしまっている。そう考えると高いと感じていたハーマンミラーのワークチェアも安く思えてくるから不思議。12年保証付きも後押しして購入。政府も働き方改革で正社員の副業容認に転換したのでワークスペースの整備を先にしていても損はないだろう。今のところ若干仕事をしているものの、ほとんど漫画を読むためのチェアになっている。

ALDEN 9901(ワークシューズ)

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オールデンといえばコードバンのプレーントゥ。カーフのペニーローファーは持っていたがこちらは初めて。木型が違うので青山のラコタハウスで試着しにいってサイズの在庫があったのでそのまま購入。後日、某メンズ館の元靴のバイヤーに聞いたところ、どこでも品薄なので見つけたら即購入で正解とのこと。ワークチェア同様に「メンテナンスをこまめにして長く履く」というスタイルに自分が変化してきたのかも知れない。カジュアルにもビジネスにも合う、というのがよい。

まとめ

世間も自分自身も、消費行動の変化を感じる1年だった。所有する価値、使用する価値、シェアするもの、短く使うもの、長く使うもの。チャネルも楽天Amazon、メルカリ、百貨店、コンビニと使い分けている。あとは、高額になればなるほど、定番で王道のアイテムを好むようになってきた。それは年齢が原因なのか、それとも角が取れて丸くなった人間として、より丸に近づいているのか。必要なくなった際にメルカリで売りやすいのもポイントである。


次回、食べ物編と書籍編を書く予定。

人々の行動はテクノロジーの進化によって変化する

先日、社内向けにセミナーを行った。うちの会社は歴史も長く中途採用もほとんど行っていないので、社内はとても仲が良いが、故にコミュニティがクローズドになりやすい。そういったこともあり、"外部人材に聞く"というテーマで、定期的にセミナーを開いている。

私はウェブサービスベンチャーやウェブサイトを中心とした制作プロダクションにいたのでITやインターネットについて、ざっくり話してもらいたいというものだった。

1回目は7月に行い、異業種から転職してきて感じたことや素敵なことを述べ、SNSとの付き合い方などを話した。今回は2回目なのでもう少し踏み込んだ内容にした。社内向け資料なので抜粋して記載する。

1. 前回に続き「インターネットの付き合い方」について語った。主にマインドセットについて

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2. Forrester Researchの"Competitive Strategy In The Age Of The Customer (2011)"を下敷きにコミュニケーション手段の変化と、マーケティングの変化 (コトラー先生的に)、デザインにおいて何が花形かを整理した。※かなり主観f:id:beerhole:20161227111730j:plain

3. インターネットはコミュニケーションチャネルとして登場して、ECなどが増えて販売チャネルとして役割が拡張し、データ販売などにより流通チャネルとしての機能も担うようになった。さながら産業革命から今日までを遡っているような錯覚に陥る。そしてIoTによりもう一度産業革命以降の変革が同時多発的に起きていると感じた。

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4. インターネットの付き合い方まとめ。誰かにとっての当たり前が通用しない。マインドを共有・伝えるのは難しい。

私はデジタルネイティブ世代ではないが、カウンターカルチャー、スケートカルチャー、音楽のカルチャーにより、「シェア」「助け合い」「オープン化」みたいなものは自然と身についたのかも知れない。

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私は人前で話すのが苦手なので、スライドの枚数は多めに作る。

スライド作成は土日や終業後に作った。諸々忙しかったこともありギリギリまで終わらず、なんでこんなことしているのか途中で気持ちが迷子になったが、セミナーは聞きに行くより自分でやるに限る。それが一番自分自身の糧になる。

 

以下、セミナーを通じて気づいたことを備忘録的にまとめる

  • デザインの役割は拡張しているかもと思っていたけど、自分が知らなかっただけで本質は同じ
  • マーケティング3.0の浸透を改めて感じる。純粋な消費者なんて存在しない。誰もが発信者で創造者だ。だからグランピングが流行ったり、居酒屋でコースの忘年会じゃなくキッチン付きのスペースに材料持ち寄ってパーティーをしたりするのだ。
  • IoTで起こることはインターネット以降のスピード感以上でオセロのように一気に変わるかも知れない

2017年には第3回目のセミナーがある。今度はブロックチェーンについて話そうと思う。

しかしながら、対象者は通常のセミナーと違って年齢もリテラシーも業務も千差万別だ。システム担当者もいれば店頭で接客しかしたことがない人もいる。そして20代から60手前までいるので難易度の設定に相当悩む。

 

追伸:On The Road(路上) / ジャック・ケルアックの一節。この部分が非常に好きだ。

彼は、本物のインテリになるというすばらしい可能性に憧れた少年院収容児だったわけだ。そこで彼は「本物のインテリ」から聞き知った調子でしゃべり、その言葉をごたまぜにしてでも使いたかったのだ。

 まるで私じゃないか。

マーケティングとデザインと30男のコトラー童貞

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ここ数年ずっと私は「ブランドをどう作っていくか」のような、ブランディングやブランド戦略の類(広義な意味でのマーケティングだと理解している)に興味を持っている。ベンチャーで1からサービスを立ち上げたときに、どう世間に浸透させていくかに非常に苦労したのがきっかけだった。

マーケティングと言えばフィリップ・コトラー氏だが、代表的著書である「マーケティング・マネジメント 」や「マーケティング原理 」は1,000ページ前後ととにかく分厚い。本書は200ページ前後なので古本で購入した。マーケティングを専門に学びたいわけじゃなく、デザインの実務や関連の中でのマーケティングを教養として知りたい人には丁度良いと思う。(つまり、私だ)

 

本書は具体的なマーケティングの戦術や施策の内容ではなく、思考法のようなもの。マーケティングに関する80のキーワードを名言を引用しながら考え方について書いている。私が特に大切だと感じたポイントは以下の通り

 

 

上記の3つのポイントは、"マーケティング視点"という単語を"デザイン思考"に言い換えても成立する。特に本文中にあるヒューレット・パッカードの創業者であるデービッド・パッカード氏の言葉の引用

 

マーケティングは、マーケティング部門だけに任せるにはあまりに重要すぎる」

 

そしてこちら、IDEOのティム・ブラウン氏の言葉

 

「デザインはデザイナーに任せるには重要すぎる」

 

私はデザイン思考の件でこちらの方を先に知っていたが、おそらくデービッド・パッカード氏の言葉へのオマージュなんだろう。

もしかしたら日本だけかもしれないが「マーケティング担当」と聞くと販促やっている人とかPR担当とかウェブ広告運用しているとか、非常に狭義な意味でのマーケティングを想像してしまう。デザインも同じで実際に作る方のコアスキルのデザインを想像してしまう人が多いと思うが(UXも同じ!)、今日における広義な「マーケティング」や「デザイン」は経営そのものだったり生き方そのものだったりする。デザイン思考やUX関連の書籍と一緒に読むと非常に勉強になると思う。


追伸:似たような話で、山口義宏氏のコラム「マーケ業界における人の成長ステージ考察etc. 」を読んだ時も、デザイン業界でも同じ事が言えると思った。キャリアパスに迷っている人は読んだ方がよいと思う。本当におすすめ。

note.mu

最近気をつけているのは、時間は限られているし、憶えられる量も限られているので、時代が変化しても価値の変わりにくい内容の本を選ぶようにしている。置く場所も限られているしね。

村上春樹とボブ・デュランとスティーブ・ジョブズと〜ボブ・デュランの好きになり方〜

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/74/Bob_Dylan_in_Toronto2.jpg

ボブ・デュランがノーベル文学賞を受賞した。村上春樹ファンのガッカリした声や文壇の賛否両論は当然あるだろうが、僕は単純に嬉しい。村上春樹も大好きだがそれ以上にボブ・デュランが大好きだからだ。なので、このようなきっかけで世間の注目が集まり、しっかり聴いたことのない人がとりあえずYouTubeで聴いてみたり、歌詞を調べてみたり、CDを買ってみたりするのはとても良い事だと思う。

 

でもきっと若い世代やこれまでボブ・デュランに興味なかった人にとっては難解で退屈な音楽かもしれない。別にこれは自分を通ぶって言っているのではなく、同じように自分が十代の頃、自らの意思で初めてビートルズを聴き直したときの感想が「古臭くて退屈でローファイな音楽」だと思ったからだ。(当然、その印象は次第に払拭される)

音楽はその時代を表す鏡のようなものなので、時を超えて聴くには、そのカルチャーや時代背景をある程度理解した上じゃないともったいないのだ。そういうわけで個人的に、ボブ・デュランをもっと好きになる本を2冊紹介したい。これらを読んでから聴くと印象は全く違うものになると思う。

アイデン&ティティ―24歳/27歳 - みうらじゅん 1997 (角川文庫)

こちらは映画(監督:宮藤官九郎)にもなったので知っている人も多いとおもう。舞台はバンドブームの終わりに差しかかった頃。主人公の空想の中でドラえもんよろしくボブ・デュランが登場して主人公の「真のロックとは?」「自分のアイデンティティとは」の葛藤や悩みに答えるというもの。この作品を読むとみうらじゅん氏の愛とリスペクトを通じて、ボブ・デュランの素晴らしさや偉大さを知る事ができる。そして何より、実際に歌を聴きたくなるのだ。

スティーブ・ジョブズ - ウォルター・アイザックソン 2011(講談社

ご存知スティーブ・ジョブズの自伝。本書にはしきりにボブ・デュランが登場する。西海岸とヒッピー文化と、カウンターカルチャーと、LSDと、禅と、ボブ・デュラン。どのような背景を経て、Appleが、iPhoneが生まれたのかがよくわかる。もっとも象徴的な一節は、初代Macintoshが発表された1984年の株主総会にて、スティーブ・ジョブズThe Times They are a Changin’の詩を朗読するシーンだ。これがウルトラかっこいい。実際に時代を変えたのだから。

実は僕は、これに非常に影響を受けたクチで、(以前のエントリーでもこの曲が登場する)勝負という日にはThe Times They are a Changin’を聴きながら出かけるようにしている。

いかがでしょうか。これをきっかけにボブ・デュランを好きな人が増えたら嬉しいな。初めに買うならThe Times They Are a-Changin'(1964)がおすすめです。

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ちなみに村上春樹の作品「世界の終りとハードボイルド・ワーンダーランド」にもボブ・デュランは登場する。Like a Rolling Stone、Blowin' in the Wind、Hard Rainを聴きながらこの小説を読んでみるのも良いだろう。 今回の発表を受けて、「ボブ・デュランの作品に村上春樹は出てこないけど、村上春樹の作品にボブ・デュランは出てくる。そういうことさ」みたいな事をつぶやいている人がいたけど、うまい事言うなと思った。

追伸: トレインスポッティングのアービン・ウェルシュ氏が「私はディランのファンだが、これは、もうろくしてわめくヒッピーらの悪臭を放つ前立腺がひねり出した検討不足で懐古趣味な賞だ」とTwitterでつぶやいてたようだ。最高だな。

膨張するデザインの持つ意味 / ポール・ランドのデザイン思想(Thoughts on Design / Paul Rand)を読んで

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僕がポール・ランドの本に興味を持ったきっかけはジョン・マエダ氏だ。ジョン・マエダ氏はMITでソフトウェア工学の修士を取得した後、筑波大学大学院で芸術の博士を取得している。MITメディアラボの副所長などを経て現在はWordPressにいる。

スティーブジョブズの言葉「文系と理系の交差点に立てる人こそ大きな価値がある」じゃないけれど、間違いなく、文系と理系の交差点に立っている人間だと思う。経歴やアウトプットには憧れないが、僕も文系と理系、デザインとシステムの関係のような相反するものの関係性を人生のテーマにしているので、ジョン・マエダ氏は当然雲の上のロールモデルである。そんな彼がデザインに興味を持ったきっかけが図書館で「ポール・ランドのデザイン思想」を読んでからだという。その記事を読んですぐにAmazonの欲しいものリストに追加した。

また、ジョン・マエダ氏の語っている「3種類のデザインについて」にあるように、

wired.jp

デザインの意味がどんどん変わってきているからこそ、あえてクラシックなデザインの本を読んで、デザインのもつ普遍的な部分は何かを探りたかったのもある。

あとは最近わけあってビジネス書ばかり読んでいるので、これくらい文字の少ないビジュアルブックを読んで頭を休めたかったというのもある。そんなに頭の作りが優れてないので、すぐ疲れるのである。

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本を読むにあたり、ポール・ランドのことは当然知っていたけどIBMのロゴデザインの人くらいにしか知らなかったので、色々ネットで調べてみた。デザインを独学で学んだことと、「ポール・ランド」という名前も本名ではなく(ユダヤ人であることを隠したい時代的な背景があったにせよ)彼が作った最初のコーポレートアイデンティティのようなものだという点。ちなみにこの本は1947年に彼が33歳のときに書かれたもので偉大なIBMロゴもABCテレビのロゴも誕生してはいない。

 

いくつか気に入ったメッセージを引用。

 

グラフィックデザインとは、見る者にメッセージを伝えられなければ、優れたデザインとは言えない。」
「デザインはそれが広告であれ、出版物であれ、工業製品であれ、常に美しく、目的に適うことが必要である。コンセプトが非常にわかりやすいヴィジュアルで表現されていてこそ、優れたデザインと言える。また、優れたデザインであればあるほど、ごくありふれたものが、洗練されて見える。」

 

常に美しくあること、目的に適っていること、コンセプトを伝えること

これは別にデジタルデバイスでも、UIデザインでも、ビジネスデザインでも、何も変わらない。
当時はコーポレートアイデンティティが担う役割が、現代はビジネスデザイン(デザインシンキング)やテクノロージデザインに変化しただけのことだと思った。デザインの本質は変わらない。問題解決の手法だ。買ってよかった。

 

追伸:ところでこの帯、今目にすると味わい深い。「デザイン界のドン。一度でいいから叱られてみたかった。- 佐野研二郎