そば屋のラーメンをめぐる冒険
そば屋のラーメンについて語るには、まず山形の水車生そばの鳥中華から話さないといけない。きっかけはブルータスのお取り寄せ特集。ただの直感だが「鳥中華」というワードが実に刺さった。文字を目にした瞬間から食べたくなった。もしかしたらそれは幼い頃大好きだったハウス本中華醬という即席麺のせいかもしれない。
創業1861年の老舗の蕎麦屋である水車生そば。鳥中華自体の歴史は浅く20年程度のようだ。元々はまかない食としての裏メニューで、麺は中華そばだがスープはそばに使う和風だし、具は鶏肉・天かす・のりを使って、さらにこしょうが効いている。
水車生そばの鳥中華 700円
ずっと気になりながらも、取り寄せるタイミングを逸していたので、山形へ旅行した際に実際に食べに行った。3階建てで席数はかなり多いが、周りを見渡してもほとんどの人が鳥中華を食べている。裏メニューの表化現象。味の方だが、そばの和風だしだからどうかというより、山形の料理は軒並みほんのり甘い。本来自分の好きな味ではないけど、なんだか美味い。なんとも言えない味がクセになるのだ。
それから、鳥中華を調べてみると、色んな店でやっているではないか。山形では板そば、冷たい肉そば、に並んで鳥中華も立派な名物であった。蕎麦屋のラーメンが定着しているのだ。いつも山形へ行った際に立ち寄る「つるよしそば」でも見渡すとラーメンを食べている人がちらほら。本来蕎麦屋では蕎麦を食べるべきだと思っていた自分にはカルチャーショックだった。看板メニュー以外の商品が美味しいわけないと思っていたからだ。さっそく中華そばを頼んでみた。
つるよしそばのラーメン 600円
う、うまい、、、!素朴な味ながらも完成されている。
そこから自分の「蕎麦屋のラーメン」ブームに火がつく。だが東京には数えるくらいしかめぼしいお店がなかった。いくつかオススメを列挙する。
Cセット(中華そば+ミニカレー) 945円
たまたま会社から比較的近かったから頻繁に行くようになった。ここは山形そばは関係ない。石神先生おすすめのお店らしい。このお店も中華そばを食べている人が多い。豚コマの入ったカレーとのセットが最高だ。なんとも言えない懐かしい味。そこまで感動しないけど、たまに食べたくなるのだ。
冷たい肉中華 680円
不便な場所にあるのが残念だが、東京で食べれる鳥中華では個人的にナンバーワンだと思っている。かなりレベルの高い味。もちろん冷たい肉そばも美味い。当然こしょうをかけて食べるのだった。常連化の予感。
鳥中華 580円
冷やし肉そば 400円
そば屋というより山形そばを看板にした大衆居酒屋。場末感はすごいが、とにかくコスパがいい。鳥中華580円。肉そば400円。山形そばが恋しくなったらすぐに行けばいい。
ちなみに個人的に終の住みかは山形の天童市がいいと思っている。ここにミース・ファン・デル・ローエのファンズワース邸のような家を建てるのが夢だ。
調べてみると山形県はラーメン(外食)の消費量が日本一だ。たしかに米沢には赤湯からみそラーメンがある。新庄にはとりもつラーメンがある。酒田にはけんちゃんラーメンがある。そして冷やしラーメンがある。もちろん鳥中華もある。
あとは天童市の水車生そばに行ったときに感じたのだが、ここはモダンな家が多いような気がする。天童木工の自由に出入り出来るショールームがあるのも関係しているのかもしれない。柳宗理と曲木の優れたプロダクトに小さい頃から触れて、北欧の若者みたいに初任給でいい椅子を買ったりするような文化が根付いているのかな、なんて思ったりして。