beerhole’s blog

ウェブデザインを中心とした雑記。自分用のメモ。音楽と美味しいもの、ライフスタイルについても少々。

2017年ベストバイ(デザインと音楽好き40男が買ってよかったもの)

今年も俺は恒例の、アラフォー男子デザインと音楽好き会社員の選ぶベストバイまとめをやる。後半半分は飲食店。選定の基本的な基準は「行動や生活や嗜好が変化させられたもの」。40年近く生きていて変化するのは難しいから。それではいきます。

f:id:beerhole:20171228135542j:image 

Aesop(イソップ) / レスレクション ハンドバーム

乾燥肌だから冬場はハンドクリーム必須派。オーガニックでラベンダーの香り、そしてべたつかない。パッケージもメンズライクなのがいい。おじさんだから。シャンプーやハンドソープは使ったことあったけどどのラインナップも、メンズにもウィメンズにもおすすめしたい。

f:id:beerhole:20171229061559j:plain

 

ウェルテック コンクール ジェルコートF 90g

殺菌効果が高いとか発泡剤や研磨剤が入っていないから歯にやさしいとか、あるけど、ジェルで浸透する感じとか磨きの感触がもうこれに慣れてしまった。エビスのプレミアムケアとこのジェルコートが自分の中のベストプラクティス。少し高いけど少量で磨けるのでランニングコストはそこまでな筈。

f:id:beerhole:20171228122755j:image

Fire TV Stick

TVは元々観ない派なので購入や検討が遅れたけど、NetflixもhuluもAmazon Primeも会員なので、購入してみた。やはり色々繋げたほうがより便利になるし、自分の行動にも様々な変化が起きた。Google Home(Chrome Cast付)も購入したがまだまだ便利さを感じる程にはなっていないので買ってよかったかはわからない。とにかく教訓は、数万円前後で試せるものは素早く試してみるべきだと思った。知らないものについては何も語れない。

f:id:beerhole:20171228122835j:image

MOJITO / ROOM No.206 JACKET

イギリス軍のライナージャケットに着想得たアイテム。エルボーパッチもイケてるし、着込む量に合わせてボタンの留め方を変えてシルエットを調整できるのが最高。マッキントッシュの類のコートのライナーとしても利用出来るし、この秋冬はとにかく登場回数多かった。

www.beams.co.jp

f:id:beerhole:20171229061417j:plain

 

J CREW / トランクス

下着はトランクスが好きだ。シャンブレーか柄物がいい。十代の頃、周囲がボクサートランクスばかりなので、そのアンチテーゼとギャップ意識(ビンセントギャロよろしく白ブリーフは流石に無理だった)で始めたが、気づけばアラフォー×トランクスというなにもギャップのないアイテムになってしまった。でも今更変えられない。いつもはBROOKS BROTHERSかGAPで購入していたのだが今回初めてJ CREWでトライ。とにかく柄がいい。尚、日本には店舗ないので購入は本国オンラインから。※ビンセントギャロのグンゼの白ブリーフ好きは有名。日本来日時に大量に買い込んだエピソードあり

www.jcrew.com

 

f:id:beerhole:20171228122906j:image

OnkartGromt Grombass

自分のバンドで、Dinosaur Jr.を下敷きにしたような曲が出来たので、Dinosaur Jr.のLou Barlowが使っているエフェクターを購入。日本での正式取扱がないので本国メーカーサイトから直販した。ディストーションは芯が細くなったり、ローが削れるものが多いけど、こちらはしっかりローエンドが残りながら最高に歪んでくれる。何より、あまり人と被らないところもいい。

 

f:id:beerhole:20171228123101j:image

GIOS MISTRAL

クロスバイクも散々検討して何年も購入に至らなかったもの。きっと5万円前後のクロスバイクを検討した人は皆、GIANTとLOUIS GARNEAU、GIOSとトーキョーバイクあたりで迷う。自転車やっている人からするとどれもママチャリと大差ないらしいから好きなのを買え、と言われたのでさっさと購入した。あとはメーカーによって微妙にサイズの刻みが違うから体型に合わせて選んだらよいかもしれない。引っ越した結果、自由が丘や目黒も自転車圏内になったので本当に最高。新潟出身の私からしたら東京は晴れてばかりだし、駅と駅の距離が近いので自転車を乗らない理由がないのだ。

f:id:beerhole:20171228123146j:image

元祖のりトースト / 珈琲専門店エース

ここから食べ物編。トースト、のり、バター、醤油のシンプルな味わい。170円。神田駅から徒歩3分、朝7:00からやっているのでモーニングに行くのがいい。のりトーストとブレンド(おかわり自由)のAセット500円。エースのAセット、実にいい。店内はタクシーの運ちゃんやよくわからない営業マンの吹き溜まりみたいな、一見おしゃれ感0だけど、平野紗季子さんに紹介されたり、ポパイでもドーナツが紹介されたりと絶妙なポジションである。

 

f:id:beerhole:20171228123257j:image

五目ビーフン(汁なし)/ ビーフン東

池波正太郎先生の銀座日記に登場するこちら。恥ずかしながら初来訪。入居している新橋駅前ビル1号館がすでにレトロだがその中でも一際レトロな雰囲気。この日は瓶ビールと五目ビーフン汁なしを注文。そのままでは薄味で、自分でにんにく醤油で味を整えるスタイル。新橋で仕事帰りにスーツとネクタイでビーフンを啜りながら瓶ビールを飲むという人生。控え目に言っても6年前ですら想像していなかった。そんな体験価値。なお、バーツアン(中華ちまき)も最高だが結構デカいので注意が必要である。

f:id:beerhole:20171228135722j:image

f:id:beerhole:20171228135755j:image

たんめん / 中華三原

銀座のど真ん中にある昭和な中華屋。うそみたいだろ、銀座なんだぜ。たんめん700円。やばいくらい化学調味料の効いたジャンクフード。銀座という街とのコントラストが余計に美味く感じさせる。

 

f:id:beerhole:20171228135851j:image

フルーツサンド / 珈琲日記

もはやインスタグラムで飲食店を探すことは普通のことである。最高のフルーツサンドを探すべく、インスタでフルーツサンドのタグで検索。そして目に付いたのがこの代官山にあるお店。とにかく見た目が美しいフルーツサンド。味も最高である。フツウニフルウツより好き。今の所シーズン通して写真と同じ組み合わせのフルーツ展開のみなので、アップデートに期待。※2017年8月30日をもって移転準備のため休業中らしい、、、

 

f:id:beerhole:20171228135922j:image

ドリップコーヒー / ツバメコーヒー

前から気になっていたけど、新潟の燕というマイナーな場所にある為、機会に恵まれず伺えなかったお店。コーヒーはもちろん美味しいんだけど、とにかくコンセプトが最高。自分の出身が新潟だからこそ、この近辺がどんな土地なのかは知っている。だからこそ全国的に名の知れるお店があるのが素晴らしく感じる。この日は美容室は定休日だったけど、カフェもショップも素晴らしかったな。スリーブがかわいい。

 

f:id:beerhole:20171228135954j:image

朝食セット / Onigily Cafe

中目黒にある、カフェのような雰囲気のおにぎり屋さん。でもおにぎりや惣菜は正統派に美味しい。そこが最高なんだ。朝食セットではワンコインで好きなおにぎり2コとお味噌汁と惣菜1品とドリンクが付いてくる。自分のおススメはゆかり納豆とねぎ味噌大葉。

まとめ

本当は車が真のベストバイだったけど、10選に入れるにはプライスが他と違いすぎるので省いた。でも、この購入は(当たり前だけど)本当に生活と行動が変化した。行かないところに行くようになったのはもちろん、旧山手通りや表参道、青山通り辺りを走るとやっぱり徒歩とは景色が違うし、自分で購入した車で走って、はじめて東京の人になれた気がした。東京に引っ越してきて数十年経て、やっとだけど。根が田舎者なのである。また、シェアが当たり前の時代にあえて所有するのも悪くないと思った。


常に新しいことを学んで、変化し続けないと、俺たち途端に古くなってしまう。そう強く感じた1年だった。自分が以前より年齢を重ねているからかもね。

80年代の漫画と喫茶店の関係とウインナーコーヒー

f:id:beerhole:20160327132006j:plain

僕はウインナーコーヒーが大好きだ。この類の日本でしか呼ばれない名称のものだったり、独自の進化を遂げたものが最高に好きだ。ウィキペディアで調べる限り、アインシュペナーやエスプレッソ・コン・パンナが元ネタであり元祖にあたるのかも知れないが、本格派の輸入物には興味がない。パンケーキではなくホットケーキ、とにかくそういうことだ。
だから僕はお茶をするなら純喫茶を好んで選ぶ。僕の言う純喫茶とは、ウインナーコーヒーとレスカ(レモンスカッシュ)があるかどうかだ。アイスミルクがあれば尚良い。

 

今の若い子のたまり場はサイゼリアかも知れないけど、僕がティーンだった頃はマクドナルドだった。その前の世代は喫茶店だった。だから幼少の頃読んだ漫画には喫茶店が舞台だったりよく登場してきたりした。気まぐれオレンジロード、タッチ、特攻の拓、etc。少しだけ不良の登場人物たちが喫茶店を愛用する。僕自身は不良でもこじらせてもいなかったのでサードプレイスは図書館だった。でも漫画の影響で喫茶店への憧れはとても強かった。つまりは喫茶店でウインナーコーヒーを飲む行為は背伸びした憧れ行為であり、青春を取り戻している行為なのだ。

 

ウインナーコーヒー。砂糖が入っていてもいいけど、甘くないのがいい。最初の一口がもっともと重要だ。センスが要求される。僕はスプーンも使わなければ、混ぜたりもしない。そのまま口をつけて啜る。生クリームが口の周りについてしまうのも気にしない。それから、生クリームとコーヒーを均等に減らしていく。以上だ。簡単じゃないか、と思うだろう。やってみたらいい。ウインナーコーヒー愛好家になってしまうから。

おすすめベスト3

いずれもノスタルジックな純喫茶でもなければ不良のたまり場でもないのはご容赦頂きたい。

エスト青山ガーデン(乃木坂)

f:id:beerhole:20170427150143j:plain

f:id:beerhole:20170427150358j:plain

いきなり変化球で申し訳ないが、ここのウインナーコーヒーは生クリームが別でやってくる。驚くべきはコーヒーも生クリームもおかわり自由な点。思い思いのクリエイションでウインナーコーヒーの飲み方の練習場にはもってこいだ。分厚い小説を相棒に行ってみよう。

茶亭 羽當(渋谷)

f:id:beerhole:20151009170045j:plain

味でいうと、1番かもしれない。値段はすこし張るが、抜群にうまい。何よりコーヒーがうまい。生クリームがうまい、生クリームの量が絶妙だ。尚、提供する器は、そのお客さんの雰囲気で選ばれる。

クルミドコーヒー(西国分寺

f:id:beerhole:20131124104202j:plain

マメヒコの流れを汲むお店。オープンの経緯は検索してみたらいい。アート・演劇クラスタの巣窟で世界観も独特である。店の雰囲気の好き嫌いはあるが、ウインナーコーヒーは絶品だ。

デザイン思考とシンプリシティの法則

f:id:beerhole:20170521101106j:plain

少し古い本(2008年発売)だが、ジョンマエダ氏のシンプリシティの法則を読んだ。
ロフトワークのイベント「経営×デザイン」のインタビュー記事の中で紹介されていたのがきっかけ。

本文はちょうど100ページ(意図的に)で、10の法則と3つのキーで、それぞれの内容が単独でも読めるようになっている。10の法則については以下の通り。詳しい内容はぜひ読んでもらいたい。デザイン思考に興味のある人であれば本棚に必ず置いておきたい一冊だ。絶版だが今なら古本で比較的安価に手に入るので今のうちの購入を進める。

 

  • シンプリシティ=健全さ
  • 法則1 削減
  • 法則2 組織化
  • 法則3 時間
  • 法則4 学習
  • 法則5 相違
  • 法則6 コンテクスト
  • 法則7 感情
  • 法則8 信頼
  • 法則9 失敗
  • 法則10 1
  • ひとつめの鍵 アウェイ
  • ふたつめの鍵 オープン
  • みっつめの鍵 パワー

誰が読むといい本か

デザイン、テクノロジー、ビジネス、そして人生においてシンプリシティ(健全さ)を探求していくときにこれらの法則が有効だ、としている。そういった意味では、デザイン思考関連だけでなく、テクノロジー側の人間や経営の文脈でも参考になる本だろう。※ティムブラウンのデザインシンキングの本もそうだが、やや抽象的な表現の章もある。ロジカルシンキングの人は読み解くのに少し混乱するかも知れない。

気づきや読むポイント

2008年というのがポイントで、一般的なユーザーにとっては、クラウド化やスマートフォンに関しては前夜であり、今読むと予言的な内容にもなっていて非常に参考になる。またジョンマエダもMITに在籍していたのは84年~で常にテクノロジーの変化の隣に居たので、このような思考になったのかな、と思った。

 

もっとも印象に残ったのは、スイスのタイポグラフィーの大家ウォルフガング・ヴァインガルト氏を訪ねて行ったくだり。ジョンマエダ氏は彼の夏期講座でゲスト講義を行ったそうだが、彼が毎年毎年、繰り返し入門講義を行っていることに最初はがっかりしたそうだ。ところが3度目の訪問で気づいたそうだ。彼はまったく同じことを言っているにも関わらず、伝え方がよりシンプルになっていると。

 

基本の基本に焦点を合わせることによって、自分の知っている何もかもを、伝えたいことの核心にまで煎じ詰めることができる

 

あとは発想や思考法としては、法則よりも3つのキーが実はもっとも重要な気がした。とくにオープンであること。これは彼がWordpressに転職したときにも語っていた。

「助け合い、シェアするといった、ヒッピーの感覚のようなもの。そうした『オープンソースのメンタリティ』がありました」

そば屋のラーメンをめぐる冒険

f:id:beerhole:20170518225520j:plain

そば屋のラーメンについて語るには、まず山形の水車生そばの鳥中華から話さないといけない。きっかけはブルータスのお取り寄せ特集。ただの直感だが「鳥中華」というワードが実に刺さった。文字を目にした瞬間から食べたくなった。もしかしたらそれは幼い頃大好きだったハウス本中華醬という即席麺のせいかもしれない。

創業1861年の老舗の蕎麦屋である水車生そば。鳥中華自体の歴史は浅く20年程度のようだ。元々はまかない食としての裏メニューで、麺は中華そばだがスープはそばに使う和風だし、具は鶏肉・天かす・のりを使って、さらにこしょうが効いている。

f:id:beerhole:20160306123234j:plain

水車生そばの鳥中華 700円

ずっと気になりながらも、取り寄せるタイミングを逸していたので、山形へ旅行した際に実際に食べに行った。3階建てで席数はかなり多いが、周りを見渡してもほとんどの人が鳥中華を食べている。裏メニューの表化現象。味の方だが、そばの和風だしだからどうかというより、山形の料理は軒並みほんのり甘い。本来自分の好きな味ではないけど、なんだか美味い。なんとも言えない味がクセになるのだ。

 

それから、鳥中華を調べてみると、色んな店でやっているではないか。山形では板そば、冷たい肉そば、に並んで鳥中華も立派な名物であった。蕎麦屋のラーメンが定着しているのだ。いつも山形へ行った際に立ち寄る「つるよしそば」でも見渡すとラーメンを食べている人がちらほら。本来蕎麦屋では蕎麦を食べるべきだと思っていた自分にはカルチャーショックだった。看板メニュー以外の商品が美味しいわけないと思っていたからだ。さっそく中華そばを頼んでみた。

f:id:beerhole:20160305133811j:plain

つるよしそばのラーメン 600円

う、うまい、、、!素朴な味ながらも完成されている。

そこから自分の「蕎麦屋のラーメン」ブームに火がつく。だが東京には数えるくらいしかめぼしいお店がなかった。いくつかオススメを列挙する。

 

新宿御苑 / 四谷更科

f:id:beerhole:20160823130507j:plain

Cセット(中華そば+ミニカレー) 945円

たまたま会社から比較的近かったから頻繁に行くようになった。ここは山形そばは関係ない。石神先生おすすめのお店らしい。このお店も中華そばを食べている人が多い。豚コマの入ったカレーとのセットが最高だ。なんとも言えない懐かしい味。そこまで感動しないけど、たまに食べたくなるのだ。

 

西新宿 / 肉そば屋梟

f:id:beerhole:20170518130344j:plain

冷たい肉中華 680円

f:id:beerhole:20170518124516j:plain

不便な場所にあるのが残念だが、東京で食べれる鳥中華では個人的にナンバーワンだと思っている。かなりレベルの高い味。もちろん冷たい肉そばも美味い。当然こしょうをかけて食べるのだった。常連化の予感。

 

神田 / 河北や

f:id:beerhole:20170511153949j:plain

鳥中華 580円

f:id:beerhole:20170518222402j:plain

冷やし肉そば 400円

f:id:beerhole:20170511152051j:plain

そば屋というより山形そばを看板にした大衆居酒屋。場末感はすごいが、とにかくコスパがいい。鳥中華580円。肉そば400円。山形そばが恋しくなったらすぐに行けばいい。

 

ちなみに個人的に終の住みかは山形の天童市がいいと思っている。ここにミース・ファン・デル・ローエのファンズワース邸のような家を建てるのが夢だ。

調べてみると山形県はラーメン(外食)の消費量が日本一だ。たしかに米沢には赤湯からみそラーメンがある。新庄にはとりもつラーメンがある。酒田にはけんちゃんラーメンがある。そして冷やしラーメンがある。もちろん鳥中華もある。

あとは天童市の水車生そばに行ったときに感じたのだが、ここはモダンな家が多いような気がする。天童木工の自由に出入り出来るショールームがあるのも関係しているのかもしれない。柳宗理と曲木の優れたプロダクトに小さい頃から触れて、北欧の若者みたいに初任給でいい椅子を買ったりするような文化が根付いているのかな、なんて思ったりして。

ジョナサン・アイブの本から学ぶデザイナーのキャリアパスについて

f:id:beerhole:20170414064943j:plain

ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー」を読んだ。

私がアップルを好きになったきっかけは、タンジェリンのG3である。つまり、スティーブ・ジョブズとジョナサン・アイブのコンビによるプロダクトがきっかけなのだ。なので本書が発売されるとすぐに買ったものの、デザインから遠ざかっている時期ということもあり、しばらく読んでいなかった。いまデザイン思考の流れも含めて気持ちが、デザインについて向き合っているので改めて読んでみた。

 

ジョナサン・アイブ自身は本質的にはインダストリアルデザイナーだが、デザイナー全般のキャリアパスを考えさせられる一冊だった。
インダストリアルデザイナーかどうかは大した問題ではない。産業革命もアーツアンドクラフツ運動も発祥のイギリスで、あの時代に生まれてデザイナーを目指すならばインダストリアルデザイナーを志すのがポピュラーだ。むしろ、ジョナサン・アイブの才能が最大限発揮されたのはiOS7のタイミング、ハードウェアとソフトウェアの両方をみるようになってからだと思う。もし今ジョナサンアイブがデザインの学生であるならば、ソフトウェアのUIデザイナーになっているかもしれない。


さて、ジョニーアイブ自身は非常にエリートすぎて、とてもじゃないけど共感を持てる経歴では決してなかった。銀細工職人であり工芸の教師でもある父を持ち、高校生の頃からデザインコンペで賞を取りはじめデザイン業界で注目され、イギリスの工業デザイン分野の名門大学へ特待生的に入学し、大学の初日がデザインコンペの授賞式とカブって欠席してしまう、というような超がつくエリートである。卒業後の彼の経歴は

 

(1) イギリスを代表するデザイン事務所、ロバーツウィーバーグループ(RWG)へ入社 →
(2) タンジェリンというデザインコンサルティングファームへ3人目のパートナーとして参画 →
(3) Appleへ入社

 

となる。(1)から(2)への転職はシンプルな話で、当時のイギリスの経済状況もあり会社の経営が芳しくなく、ジョニーのマーケットの評価に対して、会社が応えられていなかった、というもの。あとは若干の上流工程へスイッチしたい想いがあったのかもしれない。(2)のときに関しては彼は経営者でもあったので、営業をしなければいけなかったのだが、本来はデザインに没頭したかったのと、あとはこのように書かれている。

 

「部外者は製品開発を根本から変えられないし、真のイノベーションを起こすのは難しい」とジョニーは言う。ほとんどの場合、契約を結ぶ前に社内で重要な決断の多くは下されている。全く新しいことを行うには、組織内部で劇的な変化を起こさなければならない」

 

この点については非常に共感できる。私も同様に受託制作では出来ることが限られてしまうと考えて、制作プロダクションから事業を行っているベンチャーに転職したのだ。そして現在も事業会社にいる。

 

他にもふたつの、示唆に富んだ内容があった

 

a) ジョニー・アイブのすごさももちろんだが、とにかくスティーブジョブズのすごさが際立っていた。デザイナーが輝けるかどうかは働く経営者の哲学や思想との相性が大きいと思う。スティーブ・ジョブズのような優れた審美眼と品質へのあくなきこだわりを持った経営者に恵まれるかどうか。共に働く経営者選びは非常に重要である。

 

b) ジョニーをアップルへ誘ったブルーナーは元々デザイン責任者としてアップルから誘われた際に、社内にデザイン組織がないという理由で2度断っている。「自社でモノをデザインしない企業では働きたくなかった」と本書で語っている。結局彼はアップルに対して「社内に本物の卓越したデザインスタジオを持つべきだ」と提言し、入社後時間はかかったが、大企業の中にありながら、小規模で、優秀で、スピードがあって、才能にあふれ、豊かな文化のある組織を環境を作っていき、ジョニーのような優秀な人材をヘッドハンティングしていった。自分の力を最大限に発揮出来る環境を作ることが非常に重要である。

 

自分がどの部分でデザインに関わりたいのか。何を求められているか。どうゆう環境を作れるか。少ない情報から知りながら、自分にフィットしたキャリアを考えていくしかない。考えていきたい。

 

あとは、彼がジャスパー・モリソンやディーター・ラムスを好きなところは、私も大好きなので、だからジョニー・アイブのデザインも好きなんだな。と思ったり。

 

最後に、やはり彼の最大の功績はこれだと思う。

 

ジェリービーン色のiMacが発売されると、同じスタイルの雑多な製品があとに続きました。6種のジェリービーンカラーのホチキスなんかもありました。iMacのおかげで消費者がそれまでになくデザインに敏感になったのです。おそらくそれが一番大きな変化でしょう。今ではだれもがいいデザインを期待します。

 

「人を動かす」と言われたら、カーネギー?それとも矢沢永吉?コミュニケーション戦略もあるよ。

f:id:beerhole:20170427162547j:plain

会社の人に勧められて、手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略(磯部光毅氏著)を読んだ。「人を動かす」と言われると、カーネギー矢沢永吉を思い出す。矢沢永吉は「成りあがり」にて、高校一年のとき、キャバレーの社長から渡されたカーネギーの「人を動かす」を10回以上読んでいた、というエピソードを書いている。関係ないけど、自分も早くもう一つの人格が許してくれないような境地に達したい。「俺はいいけどYOKOYAMAがなんて言うかな?」という具合に。

 

さて、本書はコミュニケーション戦略と言っているが、いわゆる広告代理店周辺のマーケター/プランナーの世界におけるマーケティング戦略論だと認識している。

自分の感覚では、日本におけるマーケターは職位にもよるが、領域が限定的で専門性が高い仕事が比較的多いと思う。故にその領域に特化した具体的なテクニック論の本はたくさんあるし、古典の辞典のような本もたくさんある。だけど周辺の人(※1)がマーケティングをわかりやすく理解する為の本は少ない。

(※コトラー先生曰く、マーケティングとは経営そのもの、という言葉が表しているように様々なビジネスの戦略に関わる人はもちろん、クリエーティブは当然、広義なマーケティング活動の一部に包括されるし、ITは、そのものだけで活かされるものではない。)

 

本書は、広く横断的に、しかもわかりやすく伝えている。非常に勉強になった。手書きのイラストがハードルを下げていて、よりいい。

難しいことを、シンプルにかんたんに語るのが、一番素晴らしい。難しいことを難しく語るのは最低だ。簡単なことを難しく語るのはファックだ。

f:id:beerhole:20170427162747j:plain

それぞれの戦略に思想と強み弱みがある。歴史から語ることにより、思想を伝える。7つの流派にわかれているが、どれも正しい。どれか一つを選んだり、どれが正しいかでは無く、組み合わせ方や横断した戦略が大切。戦略の統合が人を動かす。ということらしい。以下、7つの戦略

 

  1. ポジショニング論:「違い」が、人を動かす。
  2. ブランド論:「らしさ」の記憶が、人を動かす。
  3. アカウントプランニング論:「深層心理」が、人を動かす。
  4. ダイレクト論:「反応」の喚起が、人を動かす。
  5. IMC論:「接点」の統合が、人を動かす。
  6. エンゲージメント論:「関与」が、人を動かす。
  7. クチコミ論:情報の「人づて」が、人を動かす。

それぞれの戦略については、ぜひ読んでもらいたい。とりあえずマーケティングの概要については、コトラー先生のマーケティグコンセプトと本書の2冊があればよい。そのくらい良い本だと思う。

f:id:beerhole:20170427162902j:plain

ネット広告の進化についても図解があるのが嬉しい。

 

自分の会社に置き換えて考えると、小売の事業会社側なので、色々思うことが溢れてくる。宣伝の部門は、生まれとしては日々の商売の販促の側面が強い。そしてWEBマーケティングのチームもECの広告の流れで担当が作られた経緯があるので、どちらもダイレクト論(ダイレクトマーケティング)であり、顕在客向けのインサイドアウト型がほとんどなのだ。

一般客向けのアウトサイドインの思考が非常に弱く、非常にバランスが悪い。既存客の高齢化が進む中で、どうバランスを変えていくか、は重要な課題である。

 

この先どうするか、何をすべきか

最後にまとめとして「戦略をどう作っていくか」「戦略をどう進化させていくか」という二つの軸で、本来のターゲット読者であるマーケター/プランナーに向けて語っている。

戦略をどう作っていくか:

7つの戦略の組み合わせをベースに、最新のメディアやテクノロジー、データも活用しながら、新しいコミュニケーションモデルを発明していく

戦略をどう進化させていくか:

コミュニケーション環境において、インターネットとデジタルテクノロジーが、ブランドと生活者の関係性を革新していく。さまざまな領域において境目がなくなり、すべてがつながっていく。キーワードはシームレス化。

 

ビジネスの人だってクリエイティブの人だって、ITの人だって、生活者に向いているんだから、誰に取ってもシームレス化は不可避。楽しい世の中になってきた。自分が最近インターネットを強く意識したり周囲に発信しているのはつながること、シームレス化を強く感じれるから。よい時代に生まれて本当にラッキーだと思う。

東池袋大勝軒 山岸一雄氏とラーメン界のマッキンゼーの話

f:id:beerhole:20170305090850j:plain

中華蕎麦 とみ田

少し前にTwitterで話題になっていたトピックで、すきやばし次郎で卵焼きを作らせてもらえるようになるまで10年かかるという話があって、卵焼きすら焼かせてもらえないなら人件費はたかが知れているので、人件費をどんどん原価へぶっこめる故に、味の決め手は老舗ブランド確立からの奴隷制度、という話になっていた。

ブランド老舗はそれこそがたった一つの資産なので、修行完了まで20年以上かかるスキームは、それこそも修行を志す人への経歴ブランドになりえるし、店の乱立も防げるし、人件費も抑えられるしで、すごいビジネスモデルだと思う。

それから寿司の対比でコンサルタントの話になって、並みの人間がやったら20年かかることを1年でやりとげるからこそのマッキンゼーという話になる。故に、コンサルタントは在籍期間が長ければいいってもんじゃない。

 

 

自分としては、東池袋大勝軒山岸一雄氏と麺屋こうじグループの田代浩二氏の話に繋がる。
田代浩二氏は、あの有名な東池袋大勝軒で山岸氏に師事し、修行して独立をした。私はこの麺屋こうじグループを「ラーメン界のマッキンゼー」としきりに呼んでいる。麺処 ほん田中華蕎麦 とみ田麺屋 一燈などの有名大人気店(経営者)を数多く排出しているからだ。
更に、よくよく調べると、どうやら田代浩二氏は3ヶ月か6ヶ月しか修行していないようだ。たったそれだけの期間で自分のものにして、茨城の地元で店を開いてその後の快進撃や独立支援に繋がるわけである。このエピソードを知って、余計に「ラーメン界のマッキンゼー」を声高に広めていこうと思った次第だ。

 

少し疑問に感じるのは、この短い修行期間にも関わらず、長年に渡って強い師弟関係が構築されていることだ。
会社の屋号を大勝軒有限会社とし、会社概要・理念・目標に渡り"東池袋大勝軒会長 山岸一雄"のフィーチャーに終始、田代浩二氏自身の手がける店舗ののれんも大勝軒山岸一雄氏にこだわり続けている。また、妻に先立たれ子供のいない山岸一雄氏に高層マンションをプレゼントするなど、師弟関係以上の強い繋がりがある。

 

恩義や信頼関係に時間はあまり関係ないのかも知れない。濃さと深さ。このエピソードで田代浩二氏を好きになった。しかし、この修行期間と成功と山岸氏との距離はのれん騒動が起きるのも無理ないだろう、、、