ビジネス・フォー・パンクスは財務の大切さを語る、さほどパンクでない良書だった。
クラフトビールの雄、BrewDog(ブリュードッグ)の創業者の著書BUSINESS FOR PUNKS(ビジネス・フォー・パンクス)を読んだ。帯には「人の話は聞くな。アドバイスは無視しろ」なんて書いてあるものだからパンク好きの経営者による、いわゆるパンクの名言の引用を交えて経営には思想や哲学や使命が重要~の類の内容を想定していたが実際は違った。
1章の起業論で心構えや考え方を語ると、2章はすぐに財務論になる。そして非常に多くのページを割いている。そう、いかにパンクがルールを破るものだとしても財務は重要で別だ。それから読み進んでいったときにクラウドファウンディングを利用したり、自社ウェブサイトで株を売って20億集めたりと、以前どこかで聞いた「スタートアップは資金調達と顧客獲得と情報発信とサービス開発を同時に行う」という話を思い出した。また、アル・ライズ氏「経営とはマーケティングそのものである」も思い浮かんだ。そしてマーケティング3.0をしっかり実践していいる。
つまりビジネスのバリューチェーンのすべてのフェーズで消費者と接点を持ったマーケティング活動を行っているので、起業する使命や意味づけが明確であれば、あとは財務が一番重要になるわけだ。
ジェームズワット氏はそれらを体現している。「ビジネス・フォー・パンクス」というタイトルや内容もマーケティングにしか過ぎないと思う。イギリスであり、反体制や挑戦者などのイメージ戦略としてのパンクだ。クラフトビールの特性と相性が良い。
スティーブ・ジョブズがボブ・デュランで反体制のイメージを作ったのと同じだ。
本書の中にも「~界のパンク」として様々な人の台詞が引用されているが実際の狭義のパンクの人はほとんど出てこない。おそらくジョニー・ラモーンとマルコム・マクラーレンくらい。ジェームズワット氏はビールと音楽大好きおじさんなんだろう。
もくじは以下のとおり
- 1章 戦う自由人のための起業論
- 2章 未来を見る反逆者のための財務論
- 3章 迷える子羊のためのマーケティング論
- 4章 新時代の破滅的パンクのためのセールス論
- 5章 野望に燃える海賊船長のためのチームビルディング
- 6章 ひたむきな自由人のための時空論
- 7章 パンク起業家の頭の中