30代後半に差し掛かった男性が2016年に買ってよかったもの
私も流れに乗って安いもの高いもの、購入によって生活に変化が起きたものと記憶に残っているものをまとめてみた。
三菱鉛筆 クルトガ ローレットモデル ガンメタリック(シャープペンシル)
メモでも何でもパソコン(タイピング)で済ませてきたけど、今年は字を書くことが多くなったので購入。筆記用具のイメージはロケット鉛筆で止まっていたのだが、技術革新は進歩していると痛感。適度な太さと握りやすさ。そしていつまでもシャープな書き心地。見た目のブラックも好きで、MONO消しゴムもブラックにした。
明治 ハイミルクチョコレートBOX 120g 26枚(チョコレート)
頭を使うと甘いものが欲しくなる。今年はコーヒーとチョコレートを相棒に仕事をするスタイルが定着してしまった。手を汚さずに食べやすく、持ちのよさから個別包装のこの商品に行き着いた。競合であるロッテ ガーナエクセレントは134g 28枚入り、一方明治のハイミルクチョコレートBOXは120g 26枚入り。同じようなパッケージで同じような金額だが枚数は違う。でも二つを食べ比べると明らかに甘く滑らかな明治に軍配が上がるのであった。
Giovanni マグネティック・フォース・スタイリングワックス 57g(ヘアワックス)
今までは資生堂UNOかマンダムGATSBY、ナカノを使っていたけれど頭皮が弱いのと将来の不安からオーガニックのスタイリング剤に変更。オーガニックだけど、セット力や仕上がりもこれまでで一番。グレートギャッツビーのレオナルド・ディカプリオのような髪型の私だが、夜まで崩れない。コスメキッチンで買えるが高いので、私は並行輸入でまとめ買いしている。
エビス プレミアムケア 7列レギュラー ふつう(歯ブラシ)
歯ブラシなんてどれも大差ないと思いながら生きてきた30数年。でもこの歯ブラシに替えて感動した。毛は細くて、ヘッドは少しだけ横に大きめ(幅広)。"ふつう"でも柔らかく感じて、ちゃんと磨けるのか最初は慣れなかったけど、とにかく磨きやすい。私は7列レギュラーふつうだけど、とにかく色々試してみて欲しい。
Adidas Pure Boost 2.0(ランニングシューズ)
以前より走っていたが3日に1回5km~7km、ルーティーンとして定着してきたので専用のシューズを検討。本当はUltraBoostが欲しかったが手に入らずにこちらで我慢。この製品は海外限定でデッドストックだが、PureBoostシリーズであれば同様の軽さ・クッション性と、走りやすさが手に入るはず。まっとうなランニングシューズを買ったのがはじめてということもあるかも知れないが初回走ったときは感動した。足がどんどん前に出る。
JBL CHARGE2+(Bluetoothスピーカー)
リビングでもバスルームでも音楽が聴けるように購入。シティーボーイならポパイで紹介されてたようなビンテージのスピーカーよりBluetoothスピーカーでスマートにいきたいと思う。BOSE/Soundlink Mini IIとHarman Kardon/ESQUIREと迷ったけどコスパと音の好みでこちらに決定。中学生の頃のケンウッドやアイワのガンダムのようなミニコンポの時代から考えると涙が出るほど、コンパクトでスマートなわりに音が良い。
iRobot ルンバ880
引っ越して部屋が広くなったので、以前より掃除が億劫になってしまった。でもルンバを導入してからは格段に掃除が楽に。これは本当に掃除のストレスから開放された。掃除機よりも強力に吸うと思う。国産メーカーとの検討やネガティブなレビューで迷ったが、こちらの最新でないものを安く購入。半年間、ルンバ+掃除機+クイックルワイパーの併用の掃除運用だが、今のところ大満足。
Herman Miller セイルチェア(ワークチェア)
私は高校生のときに買った中古のジョージネルソンのラウンドテーブルを未だに使っている。一方で比較的安い家具は大抵引越しのタイミングで処分してしまっている。そう考えると高いと感じていたハーマンミラーのワークチェアも安く思えてくるから不思議。12年保証付きも後押しして購入。政府も働き方改革で正社員の副業容認に転換したのでワークスペースの整備を先にしていても損はないだろう。今のところ若干仕事をしているものの、ほとんど漫画を読むためのチェアになっている。
ALDEN 9901(ワークシューズ)
オールデンといえばコードバンのプレーントゥ。カーフのペニーローファーは持っていたがこちらは初めて。木型が違うので青山のラコタハウスで試着しにいってサイズの在庫があったのでそのまま購入。後日、某メンズ館の元靴のバイヤーに聞いたところ、どこでも品薄なので見つけたら即購入で正解とのこと。ワークチェア同様に「メンテナンスをこまめにして長く履く」というスタイルに自分が変化してきたのかも知れない。カジュアルにもビジネスにも合う、というのがよい。
まとめ
世間も自分自身も、消費行動の変化を感じる1年だった。所有する価値、使用する価値、シェアするもの、短く使うもの、長く使うもの。チャネルも楽天、Amazon、メルカリ、百貨店、コンビニと使い分けている。あとは、高額になればなるほど、定番で王道のアイテムを好むようになってきた。それは年齢が原因なのか、それとも角が取れて丸くなった人間として、より丸に近づいているのか。必要なくなった際にメルカリで売りやすいのもポイントである。
次回、食べ物編と書籍編を書く予定。
人々の行動はテクノロジーの進化によって変化する
先日、社内向けにセミナーを行った。うちの会社は歴史も長く中途採用もほとんど行っていないので、社内はとても仲が良いが、故にコミュニティがクローズドになりやすい。そういったこともあり、"外部人材に聞く"というテーマで、定期的にセミナーを開いている。
私はウェブサービスのベンチャーやウェブサイトを中心とした制作プロダクションにいたのでITやインターネットについて、ざっくり話してもらいたいというものだった。
1回目は7月に行い、異業種から転職してきて感じたことや素敵なことを述べ、SNSとの付き合い方などを話した。今回は2回目なのでもう少し踏み込んだ内容にした。社内向け資料なので抜粋して記載する。
1. 前回に続き「インターネットの付き合い方」について語った。主にマインドセットについて
2. Forrester Researchの"Competitive Strategy In The Age Of The Customer (2011)"を下敷きにコミュニケーション手段の変化と、マーケティングの変化 (コトラー先生的に)、デザインにおいて何が花形かを整理した。※かなり主観
3. インターネットはコミュニケーションチャネルとして登場して、ECなどが増えて販売チャネルとして役割が拡張し、データ販売などにより流通チャネルとしての機能も担うようになった。さながら産業革命から今日までを遡っているような錯覚に陥る。そしてIoTによりもう一度産業革命以降の変革が同時多発的に起きていると感じた。
4. インターネットの付き合い方まとめ。誰かにとっての当たり前が通用しない。マインドを共有・伝えるのは難しい。
私はデジタルネイティブ世代ではないが、カウンターカルチャー、スケートカルチャー、音楽のカルチャーにより、「シェア」「助け合い」「オープン化」みたいなものは自然と身についたのかも知れない。
私は人前で話すのが苦手なので、スライドの枚数は多めに作る。
スライド作成は土日や終業後に作った。諸々忙しかったこともありギリギリまで終わらず、なんでこんなことしているのか途中で気持ちが迷子になったが、セミナーは聞きに行くより自分でやるに限る。それが一番自分自身の糧になる。
以下、セミナーを通じて気づいたことを備忘録的にまとめる
- デザインの役割は拡張しているかもと思っていたけど、自分が知らなかっただけで本質は同じ
- マーケティング3.0の浸透を改めて感じる。純粋な消費者なんて存在しない。誰もが発信者で創造者だ。だからグランピングが流行ったり、居酒屋でコースの忘年会じゃなくキッチン付きのスペースに材料持ち寄ってパーティーをしたりするのだ。
- IoTで起こることはインターネット以降のスピード感以上でオセロのように一気に変わるかも知れない
2017年には第3回目のセミナーがある。今度はブロックチェーンについて話そうと思う。
しかしながら、対象者は通常のセミナーと違って年齢もリテラシーも業務も千差万別だ。システム担当者もいれば店頭で接客しかしたことがない人もいる。そして20代から60手前までいるので難易度の設定に相当悩む。
追伸:On The Road(路上) / ジャック・ケルアックの一節。この部分が非常に好きだ。
彼は、本物のインテリになるというすばらしい可能性に憧れた少年院収容児だったわけだ。そこで彼は「本物のインテリ」から聞き知った調子でしゃべり、その言葉をごたまぜにしてでも使いたかったのだ。
まるで私じゃないか。
マーケティングとデザインと30男のコトラー童貞
ここ数年ずっと私は「ブランドをどう作っていくか」のような、ブランディングやブランド戦略の類(広義な意味でのマーケティングだと理解している)に興味を持っている。ベンチャーで1からサービスを立ち上げたときに、どう世間に浸透させていくかに非常に苦労したのがきっかけだった。
マーケティングと言えばフィリップ・コトラー氏だが、代表的著書である「マーケティング・マネジメント 」や「マーケティング原理 」は1,000ページ前後ととにかく分厚い。本書は200ページ前後なので古本で購入した。マーケティングを専門に学びたいわけじゃなく、デザインの実務や関連の中でのマーケティングを教養として知りたい人には丁度良いと思う。(つまり、私だ)
本書は具体的なマーケティングの戦術や施策の内容ではなく、思考法のようなもの。マーケティングに関する80のキーワードを名言を引用しながら考え方について書いている。私が特に大切だと感じたポイントは以下の通り
上記の3つのポイントは、"マーケティング視点"という単語を"デザイン思考"に言い換えても成立する。特に本文中にあるヒューレット・パッカードの創業者であるデービッド・パッカード氏の言葉の引用
「マーケティングは、マーケティング部門だけに任せるにはあまりに重要すぎる」
そしてこちら、IDEOのティム・ブラウン氏の言葉
「デザインはデザイナーに任せるには重要すぎる」
私はデザイン思考の件でこちらの方を先に知っていたが、おそらくデービッド・パッカード氏の言葉へのオマージュなんだろう。
もしかしたら日本だけかもしれないが「マーケティング担当」と聞くと販促やっている人とかPR担当とかウェブ広告運用しているとか、非常に狭義な意味でのマーケティングを想像してしまう。デザインも同じで実際に作る方のコアスキルのデザインを想像してしまう人が多いと思うが(UXも同じ!)、今日における広義な「マーケティング」や「デザイン」は経営そのものだったり生き方そのものだったりする。デザイン思考やUX関連の書籍と一緒に読むと非常に勉強になると思う。
追伸:似たような話で、山口義宏氏のコラム「マーケ業界における人の成長ステージ考察etc. 」を読んだ時も、デザイン業界でも同じ事が言えると思った。キャリアパスに迷っている人は読んだ方がよいと思う。本当におすすめ。
最近気をつけているのは、時間は限られているし、憶えられる量も限られているので、時代が変化しても価値の変わりにくい内容の本を選ぶようにしている。置く場所も限られているしね。
村上春樹とボブ・デュランとスティーブ・ジョブズと〜ボブ・デュランの好きになり方〜
ボブ・デュランがノーベル文学賞を受賞した。村上春樹ファンのガッカリした声や文壇の賛否両論は当然あるだろうが、僕は単純に嬉しい。村上春樹も大好きだがそれ以上にボブ・デュランが大好きだからだ。なので、このようなきっかけで世間の注目が集まり、しっかり聴いたことのない人がとりあえずYouTubeで聴いてみたり、歌詞を調べてみたり、CDを買ってみたりするのはとても良い事だと思う。
でもきっと若い世代やこれまでボブ・デュランに興味なかった人にとっては難解で退屈な音楽かもしれない。別にこれは自分を通ぶって言っているのではなく、同じように自分が十代の頃、自らの意思で初めてビートルズを聴き直したときの感想が「古臭くて退屈でローファイな音楽」だと思ったからだ。(当然、その印象は次第に払拭される)
音楽はその時代を表す鏡のようなものなので、時を超えて聴くには、そのカルチャーや時代背景をある程度理解した上じゃないともったいないのだ。そういうわけで個人的に、ボブ・デュランをもっと好きになる本を2冊紹介したい。これらを読んでから聴くと印象は全く違うものになると思う。
アイデン&ティティ―24歳/27歳 - みうらじゅん 1997 (角川文庫)
こちらは映画(監督:宮藤官九郎)にもなったので知っている人も多いとおもう。舞台はバンドブームの終わりに差しかかった頃。主人公の空想の中でドラえもんよろしくボブ・デュランが登場して主人公の「真のロックとは?」「自分のアイデンティティとは」の葛藤や悩みに答えるというもの。この作品を読むとみうらじゅん氏の愛とリスペクトを通じて、ボブ・デュランの素晴らしさや偉大さを知る事ができる。そして何より、実際に歌を聴きたくなるのだ。
スティーブ・ジョブズ - ウォルター・アイザックソン 2011(講談社)
ご存知スティーブ・ジョブズの自伝。本書にはしきりにボブ・デュランが登場する。西海岸とヒッピー文化と、カウンターカルチャーと、LSDと、禅と、ボブ・デュラン。どのような背景を経て、Appleが、iPhoneが生まれたのかがよくわかる。もっとも象徴的な一節は、初代Macintoshが発表された1984年の株主総会にて、スティーブ・ジョブズがThe Times They are a Changin’の詩を朗読するシーンだ。これがウルトラかっこいい。実際に時代を変えたのだから。
実は僕は、これに非常に影響を受けたクチで、(以前のエントリーでもこの曲が登場する)勝負という日にはThe Times They are a Changin’を聴きながら出かけるようにしている。
いかがでしょうか。これをきっかけにボブ・デュランを好きな人が増えたら嬉しいな。初めに買うならThe Times They Are a-Changin'(1964)がおすすめです。
ちなみに村上春樹の作品「世界の終りとハードボイルド・ワーンダーランド」にもボブ・デュランは登場する。Like a Rolling Stone、Blowin' in the Wind、Hard Rainを聴きながらこの小説を読んでみるのも良いだろう。 今回の発表を受けて、「ボブ・デュランの作品に村上春樹は出てこないけど、村上春樹の作品にボブ・デュランは出てくる。そういうことさ」みたいな事をつぶやいている人がいたけど、うまい事言うなと思った。
追伸: トレインスポッティングのアービン・ウェルシュ氏が「私はディランのファンだが、これは、もうろくしてわめくヒッピーらの悪臭を放つ前立腺がひねり出した検討不足で懐古趣味な賞だ」とTwitterでつぶやいてたようだ。最高だな。
膨張するデザインの持つ意味 / ポール・ランドのデザイン思想(Thoughts on Design / Paul Rand)を読んで
僕がポール・ランドの本に興味を持ったきっかけはジョン・マエダ氏だ。ジョン・マエダ氏はMITでソフトウェア工学の修士を取得した後、筑波大学大学院で芸術の博士を取得している。MITメディアラボの副所長などを経て現在はWordPressにいる。
スティーブジョブズの言葉「文系と理系の交差点に立てる人こそ大きな価値がある」じゃないけれど、間違いなく、文系と理系の交差点に立っている人間だと思う。経歴やアウトプットには憧れないが、僕も文系と理系、デザインとシステムの関係のような相反するものの関係性を人生のテーマにしているので、ジョン・マエダ氏は当然雲の上のロールモデルである。そんな彼がデザインに興味を持ったきっかけが図書館で「ポール・ランドのデザイン思想」を読んでからだという。その記事を読んですぐにAmazonの欲しいものリストに追加した。
また、ジョン・マエダ氏の語っている「3種類のデザインについて」にあるように、
デザインの意味がどんどん変わってきているからこそ、あえてクラシックなデザインの本を読んで、デザインのもつ普遍的な部分は何かを探りたかったのもある。
あとは最近わけあってビジネス書ばかり読んでいるので、これくらい文字の少ないビジュアルブックを読んで頭を休めたかったというのもある。そんなに頭の作りが優れてないので、すぐ疲れるのである。
本を読むにあたり、ポール・ランドのことは当然知っていたけどIBMのロゴデザインの人くらいにしか知らなかったので、色々ネットで調べてみた。デザインを独学で学んだことと、「ポール・ランド」という名前も本名ではなく(ユダヤ人であることを隠したい時代的な背景があったにせよ)彼が作った最初のコーポレートアイデンティティのようなものだという点。ちなみにこの本は1947年に彼が33歳のときに書かれたもので偉大なIBMロゴもABCテレビのロゴも誕生してはいない。
いくつか気に入ったメッセージを引用。
「グラフィックデザインとは、見る者にメッセージを伝えられなければ、優れたデザインとは言えない。」
「デザインはそれが広告であれ、出版物であれ、工業製品であれ、常に美しく、目的に適うことが必要である。コンセプトが非常にわかりやすいヴィジュアルで表現されていてこそ、優れたデザインと言える。また、優れたデザインであればあるほど、ごくありふれたものが、洗練されて見える。」
常に美しくあること、目的に適っていること、コンセプトを伝えること
これは別にデジタルデバイスでも、UIデザインでも、ビジネスデザインでも、何も変わらない。
当時はコーポレートアイデンティティが担う役割が、現代はビジネスデザイン(デザインシンキング)やテクノロージデザインに変化しただけのことだと思った。デザインの本質は変わらない。問題解決の手法だ。買ってよかった。
追伸:ところでこの帯、今目にすると味わい深い。「デザイン界のドン。一度でいいから叱られてみたかった。- 佐野研二郎」
「UX戦略」を読むと、ビジネスの世界とデザインの世界がすごいスピードで融合していっているのを肌で感じれる。
私はアートの学位を取得して、デザイナーとしてキャリアをスタートしています。アウトプットはさておき、表層(サーフェイス)部分=ユーザーの目に実際に見える部分を制作していました。つまり、ユーザーの目に触れる一番近い存在になります。なのでデザイナーはユーザー視点にならざる負えないので、自然とユーザー視点で物事を考えるようなクセがついていきます。
※ Jesse James Garretの5Planes Model
表層を決めるのは、戦略であり、要件・構造・骨格になるので、理想とするデザイン実現の為に上流工程(※上記の表では下へ下へ)にスイッチしてきました。現在は事業会社で事業戦略や事業企画の立場にいます。今度は逆に、ビジネス戦略からスタートすると本当に後半になるまでアウトプットの絵が見えない(メンバーと共有出来ない)ことに気づきました。私はたまたまデザイナー出身なので何となくアウトプットのイメージを戦略段階から頭の中で描きながら進行しています。でも、そうじゃない人はラフが仕上がるまでイメージができてない場合すらあります。
なのでビジネスのフレームワークなどを学んだり、先日の「デザイン思考が世界を変える / ティム・ブラウン 」を読んだりして、いかにメンバーに共有していくかという悩みを抱えながら日々仕事をしています。「UX戦略〜ユーザー体験から考えるプロダクト作り〜 / ジェイミー・レヴィ 」を読んだのもそんな理由からでした。
UX戦略 = 「ビジネス戦略」 + 「価値の革新」 + 「検証のためのユーザー調査」 + 「革新的UXデザイン」
本書では上記のフレームワークに基づいて、具体的な事例と共にワークプロセスを進行していく、とてもわかりやすいものだった。あとは、UX戦略とは何かの説明と、UX戦略家のインタビューが掲載されている。
大きなポイントは、それぞれのプロセスで必ず検証の為のユーザー調査が行われて、仮説が否定されたら元のステップに戻る、ということ。ざっくりの流れは下記の通り。
STEP1. ビジネス戦略+検証の為のユーザー調査
マイケルポーター氏の本 からの引用で「コスト優位性」と「差別化」もしくはどちららもと記載している。それを見つけるために、「ビジネスモデルジェネレーション / アレックス・オスターワルター、イヴ・ピニュール 」の中にあるビジネスモデルキャンバスを利用して仮説を立てる。そしてこの段階でユーザー調査を行い仮説が思い込みじゃないかを検証する。ここでの検証はプロトタイプではなく、簡易ペルソナを作成してユーザーニーズ(バリュープロポジション=ユーザーにとっての価値)が存在しているのかどうかを探る。また、競合調査を「直接的競合」「間接的競合」「影響のある競合」で行う。
STEP2. 価値の革新+革新的UXデザイン
前のステップの仮説やユーザー調査や競合調査を元に、2つの要素の検討を合わせて行う。競合調査を「間接的競合」と「影響のある競合」まで範囲に含めているのはその為だろう。価値の革新=ユーザーのメンタルモデルの変更と書いてあるが、「価値の革新」は「革新的UX」から生まれているので2つの要素をセットで検証しているのだと思われる。例としてAirBnBとTinderを挙げているが、たしかにどちらも「価値の革新」と「革新的UXデザイン」を兼ね揃えている。
STEP3. ビジネス戦略+検証の為のユーザー調査+価値の革新+革新的UXデザイン
ステップ1,2を踏まえて、MVP(必要最低限の機能を持つプロトタイプ)を制作して、ユーザー調査を行う。バリュープロポジションそのものに誤りがあればSTEP.1に戻る。課題解決方法に誤りがあればSTEP,2に戻る。
STEP4. 製品の最適化
プロトタイプを製品版としてブラッシュアップ。ファネルマトリクスツールを利用する、といった流れ。そもそも私の関わったことのある事業ではビジネス戦略の段階でのユーザー調査は行ったことがほとんどなく、このプロセスを実務に持ち込めたら、よく起こりがちな「サービスを開始したが上手くいかない」「立ち上げてみたらイメージと違うとステークスホルダーに言われた」などは解消できるのではと思えた。デザインシンキングに基づいたプロセスの一例だと思う。
それでは以下、簡単にまとめます
誰が読むといい本?
インターネット上で新しいサービスを生み出したい人や企業及びその業務に関係するパートナー、つまり
- スタートアップを立ち上げようとしている人
- デザインコンサルタント
- 商品企画のブランドマネージャー
- 上流工程にスイッチしようとしているデザイナー
すぐに役に立つの?
具体的なフレームワークが数多くあるので役に立つ。UXデザインに関してもファネルマトリックスというツールを利用していて、こちらはとてもわかりやすく早速使ってみたいと思った。UX戦略とかデザインシンキングといった類の信者にはカスタマージャーニーマップは必須のツールのイメージなのだが、著者があまり推奨していないのが印象的だった。著者は本書内での製品をデジタルサービスと限定しており、逆に私はオンライン製品に限った戦略じゃないので、ジャーニーマップでも有用なのかと思った。
UX戦略とは?
ビジネスの目標を実現する、高い目標を持った計画。ビジネス戦略を包括した上位概念?またはビジネス戦略を含む様々な要因との大きな関係性まで含む戦略、と解釈しました。
今日からはじめよう
先日のデザインシンキングは「考え方」の考え方の本だったので、具体的な手法ではなかった。本書のプロセスを参考に自分にあったフレームワーク、ワークプロセスを見つけていきたいと思う。
さいごに
音楽の歌詞や名言の引用が非常に多く、ニールヤングやソニックユースがピータードラッガーと同列に語られていて、個人的には楽しく読めたし何より最高だ。UIデザインは極めてロジックの世界かもしれないが、UX戦略やUXデザインの場合はロジックとセンスのバランスが重要。スティーブ・ジョブスやジョシュア・デイヴィスじゃないが、カルチャーに精通したビジネスパーソンや(デジタル寄りの)クリエイターは逆に日本にはあまりいない。もっと増えたら面白くなると思う。
そういえばWIREDの記事でジョンマエダ氏も以下のようにカウンターカルチャーの影響に触れている「助け合い、シェアするといった、ヒッピーの感覚のようなもの。そうした『オープンソースのメンタリティ』がありました」世代なのかもね。
世界はそれをデザインと呼ぶんだぜ
こんばんわ、Mr.T(@MsterTeeee)です。久しぶりに更新します。
僕は、学生時代の手伝いのようなものも含めると、15年近くデザインの仕事をしてお金を稼いできました。ここでいう「デザイン」というのはCDジャケットや雑誌広告、フライヤー・ポスターやグッズなどの販促物、様々なウェブサイトの制作を指します。そして、当たり前のように毎日PhotoshopやIllustratorを使用していました。でも、ここ数年は「デザイン」から遠ざかっています。
まず、現在の勤務先はデザインスタジオ(制作会社)ではなく、小売の事業会社になります。部署の名前も担当名も、デザインに関連する部門ではありません。肩書きも全く関連しません。パソコンには当然PhotoshopやIllustratorはインストールされていません。
僕はこんな環境にいる自分を、学生時代の仲間に対して後ろめたく思っていました。なぜなら有名な美大や芸大を卒業した人でも、皆アートやデザインの仕事に就くわけではなく、まして僕の卒業した(一般的には落ちこぼれの)総合大学の芸術学科となれば、なおさらです。
そんなわけで数少ないデザインの仕事をしている仲間を(一方的に)大切に思っていましたし、卒業してもデザインの仕事に就かない人たちを僕はずっと「あいつらは最初からデザインが好きではなかった」などと思っていました。
だから、デザインから遠ざかっている自分を裏切り者のように感じていたし、最近は連絡もあまりとっていない状況になっていました。
でも、こちらの本を読んで、色々なモヤモヤが吹き飛びました。
デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) / ティム・ブラウン
ずっと気になっていながらも、非デザイナーがデザイナーらしく考える為の本だと思っていたから、別に読まなくても平気だと思っていたり。
P53より
苦労してデザインの学位を取得した人々は、スタジオ以外での役割を想像すると困惑するかもしれない。しかし、もはや成熟の域に達したデザイン分野にとって、これは必然の流れと考えるべきだ。新しい作品を製作する、新しいロゴを作る、魅力的な(少なくとも無難な)筐体に驚異のテクノロジーを組み込む、といった二十世紀のデザイナーの課題は、二十一世紀をかたどる課題とはいえない。
これは本当に目からウロコでした。そうか、デザイン分野は成熟しきっているのか、と(よく考えたら当たり前ですよね)。これまで無意識に「(特に受託における)デザイナーの立場で出来る事なんて限られている」と思い、サービス運営側(事業会社)に転職したいとか、更には、もっと上流工程(事業戦略とか事業企画)をやりたい、とか思っていたのはこういうことだったのか。
それでは、本の内容について簡単に
誰が読むといい本?
基本的には、ビジネス視点で戦略を考える人向けだと思います。でも直線的思考の人は、おそらく困惑するだろうし、すぐに取り入れるのも難しいと思った。逆に、成熟しきったデザイン業界で、デザイナーが生き残るのに身につけないといけない思考なのではと思う。そういう意味ではクラシックなデザインを学んできた人向け(まさに自分)。
すぐに役に立つの?
明確なフレームワークはほとんど書かれていない。そして下記のように書かれています。あとは、個人的な感想ですが、これを実践できる環境を組織に取り入れるのが本当に難しいと思う。頭でわかったところで、個人でやるものじゃないし、大企業におけるデザイナーの存在はいわずもがな。
本書は「ハウツー本」ではない。デザイン思考のスキルは実践から習得するのが一番だからだ。本書の目的は、偉大なデザイン思考のもとになる原理や手法を理解する「枠組み」をお届けすることだ。
結局「デザイン思考」とは?
人間中心のデザイン、人間を物語の中心に捉える、人間を最優先に考える、、、本書の中にも度々出てきましたが、一番ピンときたのは「ニーズを需要に変える」為の思考。ブレインストーミングやプロトタイプ製作はその手段にしか過ぎないと思うので。また、プロセスや考え方はUX戦略やアジャイルやリーンなども近いと感じました。
あの製品って「デザイン思考」から生まれたのでは?そう思った事例
明日からはじめよう
「スタートからかかわる」「人間中心のアプローチを尊重する」などは、サービス運営側(事業会社)に転職した理由を思い出させてくれた。
逆に「早めに何度も失敗する、どれだけ早くアイデアを形にし、検証・改良できるか?(プロトタイプの製作)」「物語を作り上げてアイデアを共有する」みたいな部分は(デザイナー的スキルを)あえて封印していた部分があるので、すぐにでも取り入れたいと思う。
もしかしたら自分は、デザイン思考でイノベーションを生みたいのではなく、デザイン思考を組織に広めたいのかもしれない。
さいごに
結局、自分がいまやっていることは変わらずデザインなのだと思えた。それがとても嬉しい。そういえばと思ってジョンマエダ氏の「3つのデザイン」論を読んでもしっくりくる。そして、今この瞬間にデザインと呼んでいないだけで今後はデザインと呼ぶのかも知れない。とりあえず、疎遠になっている昔の仲間を食事に誘おうと思いました。
おまけ
自分が知らなかっただけで、現代のアートスクールでは「デザイン」を「デザイン思考」として当たり前に教えているのかも知れない。それから、20代の人間と話してみると別にデザイン思考を学んでなくても「文系と理系」「感覚と理論」「右脳と左脳」のバランスの取れた人間が普通にいる。彼らは肌感覚でそういう時代だと認識しているのだろう。これは素晴らしく思うと同時に自分もがんばろうと思わされる。